研究課題/領域番号 |
22560019
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小林 功佳 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (80221969)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 表面界面電子物性 / 計算物理 / スピントロニクス / ナノ構造 / 第一原理計算 / 輸送特性 |
研究概要 |
本年度はトポロジカル絶縁体と金属との界面に関する理論的研究を行った。トポロジカル絶縁体はバンドギャップ中にスピン分極した表面状態が存在する絶縁体である。金属からトポロジカル絶縁体に電子を注入するとスピンホール効果が生じ、スピン分極した電流がトポロジカル絶縁体表面を流れる。本研究では、トポロジカル絶縁体としてBi2Te3、金属としてBiを考え、BiからBi2Te3に電子を注入した際にBi2Te3表面を流れるスピン分極した電流の空間分布の様子を理論的に調べた。金属として半金属であるBiを選んだ理由は、Bi2Te3とBiの(111)面の格子定数の値は近く、格子整合性が良いので、電子の界面での散乱が比較的小さく、BiからBi2Te3へと電流を注入しやすいと考えられるからである。実際、Bi2Te3基板上にBi薄膜を成長させてその電子状態を調べる実験的研究がすでに報告されており、このような系は現実に存在する。計算は、Bi2Te3およびBiの電子状態を表すためにタイト・バインディング模型を用い、量子力学における弾性散乱計算により電子の透過率および波動関数を求めた。スピンの分極度を知るために、散乱状態の波動関数のスピン期待値の空間分布を計算した。その結果、Bi2Te3の表面付近に局在して電流が流れ、その電流のスピン分極度は比較的大きいことがわかった。この計算結果より、現実のBi2Te3とBiの系においてもスピン分極した電流を得られることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に沿った研究成果があり、学術雑誌に掲載され、学会・国際会議等で発表されていること。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進展はおおむね順調であり、今後も引き続き現在の研究方法を維持してさらに発展を図る。
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