本年度における研究成果は以下の通りである。 (1)Arのマイクロ波放電フローを用いたBrCNおよびCH_3CNの分解反応を用いてアモルファス窒化炭素(a-CN_x)薄膜の形成し、両反応でCNラジカルの付着確率を比較して膜の形成にCNラジカルが関与するか否かを議論した。すなわちレーザー分光法によるCNラジカルの数密度、時間分解発光計測にもとづく流速、単位面積あたりの膜重量にもとづき、BrCNおよびCH_3CNを原料にしたときのCNラジカルの付着確率を求めた。その結果、付着確率は両者で共に0.1-0.2程度であったことから、CH_3CNを原料に用いた場合でも膜の窒素源はCNラジカルであると結論された。 (2)ArおよびHeのECRプラズマによるCH_3CNの分解反応について、CN(B-X)遷移の高分解能発光スペクトルにもとづく反応過程解析を行った。反応系に微量のH_2O蒸気を導入して、電子のエネルギー分布を変化させて発光強度との相関を利用する新規な方法を提案した。(1)、(2)の結果は本年5月、松江市で開催される国際会議(NDNC2011)で発表予定である。 (3)Arのマイクロ波放電生成物によるテトラメチルシラン(Si(CH_3)_4;TMS)の分解反応により、水素化されたアモルファス炭化ケイ素薄膜(a-SiC_x:H)を形成させた。基板ステージに高周波バイアスを印加し硬質膜を得た。ピコデンターを用いた硬さ試験、兵庫県立大学の加速器NewSubaruを用いたX線吸収端近傍微細構造(NEXAFS)スペクトルの観測、本学極限センターにおけるラザフォード後方散乱・弾性反跳検出(RBS/ERDA)による元素分析などを行い、薄膜の硬質化機構を議論した。
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