研究課題
この研究では、光励起されたキャリアの非輻射再結合過程において生じる熱を、圧電素子を検出器として計測する実験手法である高感度PPTS法(光熱変換分光法)を開発し、大きな結晶粒界や組成変動をもつ薄膜半導体光デバイス材料の光吸収スペクトルを測定可能にする事を目的としている。23年度に測定を行った代表的な試料として、(1)二種類の化学結合状態が複雑に混じっているが、化学的安定性、高い硬度、低摩擦性等の性質を有しているため種々の分野で利用が期待されるダイヤモンド様炭素(diamond like carbon)、(2)低コスト太陽電池に活用されている多結晶シリコン薄膜、(3)微粒子構造を取って光起電力が飛躍的に増加するため、色素増感太陽電池への活用が期待されるTiO2薄膜、そして、(4)光電子結合型超LSI作製技術へも応用が期待されるGaAsナノワイアがあげられる。これらのうち、(1)-(3)については、薄膜中にgrain boundaryや僅かの異相が存在するため光散乱の影響が大きく、透過測定など通常の光学的測定技術ではその吸収係数スペクトルを得ることが出来ない。また、(4)についても、量子ナノ構造のため、同様に試料表面での散乱が大きく寄与し、光学物性測定が極めて難しい。そこで、本研究課題の主要な測定手法である独自のPPTS測定を室温から低温までの温度範囲で行い、散乱光の影響を取り除いて光学的性質を明らかにすることが出来た。これらの成果は5編の国際的学術論文として公表すると共に、欧州材料学会(E-MRS)シンポジウムや、ダイヤモンドに関する国際会議においてOralまたはPosterで発表し、外国の研究所の注目を引くことが出来た。
2: おおむね順調に進展している
光散乱効果が大きく、通常の光学的測定手法では測定が出来ない試料に対して、申請者が独自に開発している光熱変換分光(PPT)法を活用してこれらの光学物性を明らかにし、予測された目標に向かって順調に進んでいるため。
最終年度の目標としては、多種の試料について実施した実験結果をまとめることで最終目標である新しい実験手法の確立を行う。なお、散乱が多いため得られた信号強度が弱く雑音が大きかったため、より精度の高い実験を行うために24年度前半に光学系の改良を行う事が必要である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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