研究概要 |
本研究では、現在のナノテクノロジーにおいて必要不可欠である走査電子顕微鏡(SEM)における絶縁物試料の帯電現象について、cmオーダーの広範囲にわたってnmサイズの分解能でリアルタイムに計測できる技術の開発を行っている。 平成22年度にはナノモータをSEMの真空試料室内に設置しその先端部に応力測定センサーを装着し、試料表面の電位を測定する静電気力顕微鏡システムを開発した。導体上に300nmの厚みで絶縁薄膜を塗布した試料に一辺約100μmの面積に電子ビームを照射し、その中央における照射直後の電位を測定したところ、加速電圧が0,3~1kVや3~30kVの範囲であれば表面は0Vからわずかに1V程度の正電位で一定となるが、加速電圧が1.1~2.7kVの範囲では表面は数10Vといった大きな負電位に帯電し、その電位は時間とともに減衰する現象が見出された。従来から加速電圧が1kV以下では表面は正に帯電し、それ以上では負に帯電するであろうということはSEM像の信号量変化から予想されていた。また、シミュレーションによって、加速電圧が大きくなると電子ビームは絶縁膜を透過するため表面電位は0Vに近づくことは指摘されていた。しかし、実際の電位として測定結果を得ることができたのは今回が初めてである,また、試料が負電位になった場合に電位が時間的に減衰するという現象は誰も指摘しておらず、この現象の原因を追究することによって今まで理解できなかった種々の現象を説明できる可能性がある。
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