研究概要 |
チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O_3)は、現在最もよく使われている圧電セラミック材料のひとつである。膜厚が3~5μm程度のPb(Zr,Ti)O_3厚膜は、圧電特性において高い直線性を示すことから、圧電アクチュエータへの応用が期待されている。Pb(Zr,Ti)03の圧電性を決定づけているのは、膜中のドメインであることは広く認められているが、その特性とドメイン構造との関係は明らかでない。更にドメインの生成機構はまったく解明されてこなかった。しかし、最大の特性が出現するドメイン構造の設計が現在のPb(Zr,Ti)O_3研究の最重要課題であることは議論の余地は無い。そこで、本研究は、強誘電体の物性と強い相関のあるドメインの生成過程をin-situ(その場)で観察し、ドメインの生成をコントロールするパラメータを明らかにし、所望の構造を有する強誘電体ドメインの生成を行う事を目的に行った。これによりドメイン制御という新しい考えに基づく強誘電体物性制御技術の確立を行う。初年度からPb(Zr,Ti)O_3エピタキシャル膜作製技術の確立と、PbTiO_3エピタキシャル膜のドメイン形成過程の功-3〃〃モニタリングによるドメイン構造生成の決定要因の解明を行った。その結果、薄膜中の応力変化が大きな影響を与えていることが明らかになった。そこで基板の種類(熱膨張係数)を変え薄膜中に導入される応力量を変化させPbTiO_3薄膜中のドメインに対する影響を調べた。その結果、それぞれ圧縮及び引っ張り応力の印加される基板によりPbTiO_3薄膜中に生成されるa及びcドメインの量に変化があることがわかった。本年度は、更にドメイン生成過程の制御を行うことができるパラメータを解明する為に降温速度、圧力など雰囲気制御を行い、ドメイン構造に与える影響を調査した。その結果、内部応力の緩和過程を変化させる事ができ、それに応じてドメイン構造が変化することが分かった。
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