デジタルホログラフィを用いた水棲微小生物の実時間計測において,インライン型デジタルホログラフィ方式がもつ物体光とゼロ次成分,共役光が重畳する問題を解決するために新たに統計手法を用いた一般化位相シフト法とラジアルキャリアを用いる再生法を考案し,それらのシステム条件と再生特性を詳細に調べた. 統計手法を用いた一般化位相シフト法は,フレネル回折場の位相ランダム性を利用して位相シフト量を推定し,最適な評価関数を用いて符号を含めた位相シフト量を推定する手法である.これまで位相ランダム性が成り立つ条件が不明で位相推定精度が対象物体に依存する問題があったが,キャリア成分をもつ干渉縞を作ることにより物体依存性がなくなることを明らかにした.位相シフト量が任意なのでキャリブレーションが必要なく,高速カメラにより実時間計測が可能であることを示した. ラジアルキャリアを用いる手法は半径方向にキャリアを持つ参照波を用いてデジタル的に不要成分を除去する手法であり,1枚のホログラム情報のみで実現できる.近接点光源参照波の位置に関して詳細に調べ,特定の位置で不要成分除去が可能であることを示した. これらの方式に合わせた再生計算処理を高速に行う自動追跡再生プログラムの開発を行った.光走行性をもつ緑藻類生物の三次元行動の計測を行い水棲微小生物の実時間モニタリングが可能であることを示した.今回のシステムでは拡大光学系を用いていないため生物体内の屈折率計測は十分な精度は得られなかったが,周囲の環境との位相コントラストは十分にあるため,物体位置測定は正確にできることがわかった.
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