研究課題/領域番号 |
22560039
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大坪 順次 静岡大学, 工学部, 教授 (00176942)
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研究分担者 |
生源寺 類 静岡大学, 工学部, 助教 (90432195)
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キーワード | 半導体レーザ / 偏光戻り光 / カオス / カオス通信 |
研究概要 |
本研究においては、端面発光半導体レーザと面発光半導体レーザ(VCSEL)に着目し、直交する偏光成分へ戻り光を施し直交偏光モードを励起することにより、新しいカオス発生の原理・ダイナミクスを明らかにする。さらに、励起されたカオス振動を光乱数発生やカオス秘匿通信におけるランダムマスクキャリアとして応用する方法について理論および実験的研究を行う。 端面発光半導体レーザの直交変更戻り光カオスの研究においては、直交偏光戻り光によりカオス化した送信機のTEモードをさらに偏光回転させ、受信機のTMモードへ光注入しカオス同期を達成させる方法について検討した。この方式では、結果的に弱いTMモード励起させるために、かなりの強光注入が必要となる。そのため、弱光注入で有効であったカオス・パス・フィルタリングによるメッセイジ秘匿が十分に行われず、秘匿通信において問題が発生することがわかった。一方で、偏光回転した半導体レーザ間でTE-TM結合を行わせるシステムにおいても、カオス同期を起こさせることがわかり、このシステムは量子暗号などのアルゴリズムである交渉鍵のような通信方式がギガHzレンジで行えることがわかった。また、最初に意図していなかったが、このシステムではカオス通信において問題となるカオス遅延情報を非常によく隠匿できることがわかり、カオスを使ったランダム物理信号発生において有効な信号であることが判明した。 また、VCSELにおいて、本年度は対称配置を用いた二つの偏光回転カオス同期システムについて検討した。この結果、対称なシステム配置で数学的に完全型のカオス同期システムが構築できる予定であったが、実験では不可避な雑音の影響によって完全型カオス同期から光注入型のカオス同期に移行し、不安定動作することがわかった。この不安定性は、システムに非対称性を導入することにより回避されることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定の研究項目については、ほぼ最初の計画に沿って進めることができた。しかし、結果はすべて予測した通りの展開ではなく、今後研究の多少の軌道修正が必要であることが分かった。しかし、研究の過程で、これまでの予想とは異なる有用な結果も得られ、この点を伸ばすことにより、今後さらなる研究の展開が可能であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて、TE-TM偏光モード結合した端面発光半導体レーザとVCSELにおけるカオス発生と同期について、このシステムの特性を生かした方式について検討を行う。これまでの研究結果を踏まえ、偏光回転システムが得意とするカオス同期、カオス通信方式への応用を考える。特に、偏光回転によって発生するカオスでは、他のシステムでのカオス発生に比べRF領域で比較的フラットな広帯域カオスを作ることができるため、この領域でのホワイト雑音のような取扱が可能になる。この利点は、クリーンな物理ランダム信号発生などにおいて有望である。
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