研究課題/領域番号 |
22560041
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北野 正雄 京都大学, 工学研究科, 教授 (70115830)
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研究分担者 |
中西 俊博 京都大学, 工学研究科, 助教 (30362461)
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キーワード | メタマテリアル / 電磁誘起透明化 / 群速度制御 |
研究概要 |
本研究は、電磁誘起透明化現象(以後EIT現象)と同様の現象をもたらすメタマテリアル(EITメタマテリアル)を実現し、さらにその特性の制御や非線形相互作用の増強に応用することを大きな目的としている。EIT現象とは、本来不透明である媒質が補助的な光の入射によって狭帯域で透明になるというものである。このとき、透明化帯域で電磁波の群速度が極めて遅くなることから、光メモリなどの応用の観点からも広く研究されている。元々、原子系で研究されていたEIT現象が人工的な原子といえるメタマテリアルで実現されると、特性をメタマテリアルの設計で制御することができる。これまでの、EITメタマテリアルの研究は、特性は静的で外部パラメータで変化させることができなかった。そこで、本年度は、入射方向によって特性を変化することができるメタマテリアルに関して研究を行った。研究では、I型の構造(カットワイヤ構造)を3つ並べた構造を単位セルとするメタマテリアルを用いた。マイクロ波を対象とした透過測定によって、EIT現象特有の狭帯域透明化現象がこのメタマデリアルにおいて実現され、その透明化帯域が入射方向によって制御できることを示した。また、シミュレーションによって、この透明化は磁気四重極共振という極めてQ値の高い共振によって引き起こされていることが分かった。そして、パルスを用いた伝搬遅延測定によって、電磁波の群速度を真空での速度の1/188から1/694の範囲で制御できることが分かった。この成果は、EITメタマテリアルの特性の外部制御を実現した始めての例といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(平成22年度)は、特性が一定のEITメタマテリアルに関して研究し、2年目(平成23年度)は特性を外部制御可能なEITメタマテリアルに関して研究を行った。これは、当初の計画通りである。また、非線形効果を取り込んだEITメタマテリアルに関しても研究は開始しており一定の成果を得ている。今後、メタマテリアルの設計を最適化することにより、EIT現象を利用した非線形効果の増大についても成果が出ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、非線形素子を導入したEITメタマテリアルにおいて非線形効果が増大することを実証する。特に、相互位相変調効果の増大によって、効率的にサイドバンドが発生することを実験で実証する。EIT現象において局所場が増大する領域に可変容量ダイオードを導入することで非線形相互作用の増大を実現できると考えている。また、群速度を電気的に制御する手法についても研究を行う。
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