我々は、これまでに半導体レーザから出力される楕円形のビームを一枚の半導体基板を用いて真円に整形する方法を提案するとともに、640nm帯の市販の半導体レーザを用いて動作の検証を行ってきた。今年度は、本ビーム整形方法の重要なパラメータである基板に対する活性層の高さ、半導体レーザの垂直方向のビーム拡がり角、そして、発振波長がビーム形状に与える影響を実験と理論の両面から調べた。 実験には、発振波長やビーム拡がり角が異なる3種類の半導体レーザを使用した。1つめは固体レーザ励起用の808nm帯半導体レーザであり、2つめはレーザプリンタ用の785nm帯半導体レーザであり、3つめはレーザディスプレイ用の640nm帯半導体レーザである。レーザのパッケージを開き、活性層の真下に鏡面に研磨したGaAs基板を配置して基板に対する活性層の高さとビーム形状の関係をそれぞれの半導体レーザについて調べた。その結果、いずれの半導体レーザにおいても、活性層の高さが低くなるにつれて垂直方向のビーム拡がり角が大きくなることが明らかになった。また、これらの実験結果は、Huygens積分を用いた数値計算で説明できることを示した。以上の結果から、発振波長やビーム拡がり角が異なる半導体レーザであっても、基板に対する活性層の局さを適切に調整することで真円ビームが得られることを明らかにした。また、数値計算の結果から、発振波長が長くなる程、また、ビーム拡がり角が大きくなる程、活性層の高さを高く設定しなければならないことを示した。
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