研究概要 |
本研究では、傾斜型の擬似位相整合(Quasi Phase Matching, QPM)構造を備えた超大口径の非線形光学デバイスの実現と、その超短パルス発生への適用を目的とし、研究最終年度である平成24年度は、主として以下に示す光学実験による大出力光パラメトリック波長変換実験を行った。 ・前年までの結果で得られた、厚板のMg添加コングルエント組成ニオブ酸リチウム(MgLN)結晶への分極反転構造形成条件探索を元に、世界で初めて厚み10mmのMgLN結晶に反転周期~30ミクロンの分極反転構造を形成することに成功した。この周期は、波長1.064ミクロンレーザー光励起の光パラメトリック波長変換に適したものである。 ・作製した10mm厚のQPM素子を用い、波長1.064ミクロンレーザー光(パルス幅10ナノ秒)励起の光パラメトリック発振実験を行い、励起709mJ時に全出力540mJという高出力・高効率波長変換を実現した。これにより、従来に比して4倍の入力および出力エネルギーが取扱可能となった。 ・傾斜型QPM素子(結晶厚2mm、傾斜角65゜、結晶内部分極反転周期約30ミクロン)による光パラメトリック波長変換評価では、現状の素子厚・励起用光源(パルス幅35ピコ秒、波長1.064ミクロン)では実験に不十分という結果が得られた。これは、今後、素子の積層化(=長尺化)および励起光源の変更で対処・評価を継続する予定である。 以上、3年間の本研究により、傾斜型大口径QPM素子の実現、および10mm厚垂直型QPM素子の実現および高出力光パラメトリック発振の実証という成果が得られた。
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