近年、テラヘルツ波をワイヤレス通信に積極的に利用しようとする研究が世界的に推進されているが、移動体端末において、受信されたテラヘルツ波からキャリア成分を抽出する技術はまだ開発されていない。本研究課題は、レーザーの位相同期技術と光伝導素子のミキシング機能を活用することにより、連続波レーザー光によるビート波とテラヘルツ波とのミキシング動作を実証し、得られた出力をレーザーに負帰還制御することによって、テラヘルツ波のキャリアを光のビート信号として光学的に抽出する技術を開発し、テラヘルツ波利用通信の早期実現へ寄与することを目的としている。 研究開発の初年度は、回折格子にPZT素子を取り付けた外部共振器型の波長可変半導体レーザー2台を整備し、発振波長を電子的に高速微調整することによって位相同期実験を実施する予定で研究を開始した。レーザーチップ製造メーカーにおける装置のトラブルなどからレーザー装置整備の着手までに約8ヶ月の遅延が生じたものの、その間に光周波数コム発生器の整備や、テラヘルツ波のヘテロダイン実験に使用するための光伝導素子の基礎設計、アンテナ形状の検討などを実施し、また、テラヘルツ波検出装置として、テラヘルツ波の発生を確認するためのテラヘルツ波帯用ワイヤーグリッドポラライザーおよび複数のバンドパスフィルターを整備して動作確認を行い、さらに検出装置の窓材の評価および交換を前倒しして実施したことなどにより、最終的に位相同期実験の予備実験までを完了し、当初の目標を概ね達成した。
|