本研究課題では、シリコーン系ハードコートが施されたポリカーボネート表面を、フッ素レーザーを用いて、光化学的にシリカガラスに改質することにより、軽量、透明で、高い耐衝撃性を有し、しかも「傷の付き難い」次世代型の自動車用ガラス代替窓材を開発することを目的とした。 レーザーのエネルギー密度ならびに照射時間をパラメータとして、シリコーン系ハードコート上に形成されるシリカガラス改質層の化学結合状態ならびに膜厚の変化を調べた。自動車用窓材として利用するためには、テーバー摩耗試験でのヘイズ値を、従来のガラス製窓材と同等にする必要がある。そのためには、前記レーザー照射条件の最適化のみならず、ハードコート下のプライマー層の膜厚の最適化も重要であることを見出した。その結果、従来の窓材と同等の耐摩耗性を、試料表面に発現させることができた。一方、シリカガラス改質層の膜厚が厚くなると、クラックが発生し始めることが問題となった。 そこで、レーザー照射の際、試料表面にコンタクトマスク(開口50 m角)を設置し、レーザーの照射時間の変化によりシリカガラス改質層の膜厚を増加させた。その結果、試料表面の改質領域がミクロンオーダーで細分化され、膜厚1.2 mのクラックフリーのシリカガラス改質層を形成できるに至った。このような改質領域の細分化を行っても、試料は高い可視透過性を示すことを確認した。また、改質領域の膜厚増加による表面硬度の向上も認められた。 上記の結果を基に、屋外での耐候性試験、耐熱試験、ワイパー試験など、実用化のための試験を行い概ね良好な結果を得た。本手法を基に開発したポリカーボネート窓材は、現在欧州でも窓材としての認証を得ており、国内ではすでにリア、クオーター窓として電気自動車に搭載されるに至っている。したがって、本研究課題の目的は十分達成できたと考える。
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