研究概要 |
本研究課題では,大きな熱起電力と低い熱伝導率が要求される次世代の熱電変換材料に供するため,熱電半導体微粒子と磁性微粒子のハイブリッド材料を開発することを目的とする。平成22年度は以下の内容を遂行した。 1. 室温から673K(400℃)までの温度領域で,電気抵抗率ρおよび熱起電力αを測定できる「高温域熱電測定システム」を設計製作した。真空断熱容器中に独立に温度制御できる銅ブロックを設置し,その上に試料を取り付ける。銅ブロックの加熱にはセラミックヒーターを用い,PID温度制御を行った。試料に温度勾配ΔTを付け,誘起された熱起電力ΔVから熱電能α=ΔV/ΔTを算出する。電気抵抗率は四端子法で測定する。現在,標準試料を用いて装置の絶対値校正を行っている。 2.磁性ハイブリッド熱電材料の母体の候補として,(1)低温熱電材料ビスマス-アンチモン合金(Bi-Sb),(2)実用熱電材料Bi-Sb-Te化合物単結晶,および(3)強相関熱電材料FeSb_2多結晶の合成を行い,その熱電物性を調べた。このうち(1),(2)はハイブリッドの母体として有望であることが分かった。(3)のFeSb_2多結晶は基礎科学的には興味深い性質を示すが,本研究の母体としては不適当であった。これらの結果は論文・学会等で報告された。 3. 母体Bi_<0.88>Sb_<0.12>を粉砕した原材料末に,Feおよびバリウムフェライト微粒子を添加し,現有のマッフル炉で加熱し,Bi-Sb合金を母相とするハイブリッド熱電材料を合成した。Fe添加ハイブリッドでは,Feが母相のSbと反応しFeSb強磁性微粒子が母相中に分散するという目的の構造が得られた。目的どおり外部磁場の印加による磁気熱電能の増強も観測された。これらの結果は論文・学会等で報告された。しかしながらFeSbが軟磁性体であり自発磁化が零磁場で消失するため,保持力の大きいバリウムフェライト微粒子とのハイブリッドを合成し,現在その磁性と熱電特性を調べている。
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