研究概要 |
固体飛跡検出器として使用されているPADCやPC、PETの薄膜に対して6MeV/n以下のエネルギーを持ったプロトンとHeからXeイオンまでの種々の重イオンを照射し、カルボニル基等の典型的な官能基の減少数を実験的に評価した。それによりトラック単位長さ当りの官能基の減少数で表す損傷密度や照射前の平均密度から算出する実効的トラックコア半径を系統的に求めた。また、阻止能との比率から放射線化学収率(G値)も評価した。カルボニル基について言えば、固体飛跡検出器としては中程度の感度を持つPCにおいてはG値に阻止能依存性がほとんど見られなかったのに対して、低い感度を持つPETについてはCイオンよりも重たいイオンについて阻止能の増加とともにG値は大きくなることが確認された。3者のうちで最も高い感度を有するPADCでは阻止能の小さいプロトンやHeイオンについて10~20という大きなG値が確認された。その阻止能依存性は特異なものであり、CやNeイオンに相当する1,000keV/μm程度で最低値を示し、それ以上の阻止能では徐々に大きくなる。PADCはCR-39という商品名でよく知られているが、高エネルギー中性子にも感度を有するその特性が低い阻止能を持った粒子に対する高いG値という化学的パラメータ上の指標で理解されるようになった。真空中照射によってG値が低くなることも確認され、同一の阻止能を持ったHeイオンとCイオンについてはδ線のエネルギーが高いCイオンのG値が大きいことも見いだした。
|