研究課題/領域番号 |
22560058
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
矢久保 考介 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (40200480)
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研究分担者 |
島 弘幸 北海道大学, 大学院・工学研究院, 助教 (40312392)
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キーワード | フラクタル / 臨界現象 / 複雑ネットワーク / スモールワールド / 自己組織化 |
研究概要 |
本研究では、異なる階層に属するフラクタル系に共通して見られる普遍的性質とその起源を解明することにより、多様なフラクタル系の構造形成メカニズムを統一的に理解するとともに、得られた知見を基礎として機能性フラクタル構造体を人工的に作成するための設計理論を確立する。この目的のため、平成23年度では、自己相似性を有する複雑ネットワークの統計的性質について主に研究した。現実の複雑ネットワークの多くは、ネットワーク半径がノード数の対数に比例するスモールワールド構造か、ベキ的な依存性を示すフラクタル構造のどちらかの構造を取っている。平成23年度の研究では、ネットワークの形成メカニズムとこれら2つの構造的特徴の相関について調べた。具体的には、適応度モデルのパーコレーション臨界点近傍で形成される複雑ネットワークのフラクタル性を調べるため、未だ明らかにされていない適応度モデルの臨界点を、母関数を利用した解析的な方法により求め、その表式が正しいことを大規模数値計算によって確かめた。また、臨界点直上および秩序相におけるネットワーク構造のスモールワールド性とフラクタル性について数値的に調べた。その結果、秩序相においては、相関長より短いスケールでフラクタル構造を取り、それより長いスケールではスモールワールド性を有することが明らかとなった。さらに、この構造的クロスオーバーは、動的性質にも反映され、複雑ネットワーク上のランダム・ウォークに対する自己回帰確率が、特徴的時間よりも短い時間で異常拡散を反映したべキ関数になるのに対し、特徴的時間よりも長時間では拡張された指数関数となることを明らかにした。これらの研究成果は、欧米誌に発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた構造的な相関の解明に留まらず、動的現象にどのように反映されるかについても明らかにすることができた。また、適応度モデルの臨界点に関しては、数値的に求める予定であったが、解析的な表式を得ることができたことも予定を上回る成果である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえた上で、ノード削除に対して頑強なネットワーク構造のデザインに関する研究に進む。研究計画当初は明らかにされていなかったが、「過負荷によるネットワーク故障」に関する新たな知見が最近の研究によりえられたので、そのような故障に対してどのような構造を持つネットワークが頑強であるかを明らかにしていく。
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