昨年度の引き続き、多項式最適化問題(POP)に対する半正定値(SDP)緩和に対するFacial Reduction Algorithm(FRA)に関して、その性質を調べることと、その数値計算の可能性を探ることを行った。最初の成果としては、従来Kim-Kojima-Wakiの手法として知られていたPOPに対するSDP緩和における変数削減法が、FRAの部分的な適用であることを示した。これは、数値計算が難しいとされるFRAがある程度の範囲で実装可能であることを意味する。Kim-Kojima-Wakiの手法は多項式が含む単項式の指数に依存するのに比べ、FRAは係数の情報も同時に使うことができるので、さらに大きく変数を削減できる可能性がある。実際、そのような例があることを確かめた。また、POPに対するSDP緩和は数値的に不安定なことがしばしばあることが指摘されているが、FRAはこれらの数値的に不安定なSDP問題を安定な問題に変換することも確かめられた。この意味で、面的削減法の数値計算ができるとすれば、その有用性は大であると予想されるので、修士学生と共同して数値アルゴリズムを考案し実験を行い、修士論文としては発表した。しかし現状ではその実効性にやや問題があり、論文とするには至っていない。また、昨年度発表した一般の錐線形計画問題に対する面的削減法については論文を改訂し、再投稿中である。
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