研究課題/領域番号 |
22560061
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
村松 正和 電気通信大学, 情報理工学研究科, 教授 (70266071)
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キーワード | 半正定値計画 / 多項式計画 / 頑健性 / 面的削減法 |
研究概要 |
昨年、一昨年度に引き続き、多項式最適化問題(POP)に対する半正定値(SDP)緩和に対するFacial Reduction Algorithm(FRA)に関して、その性質を調べることと、その数値計算の可能性を探ることを行った。主に昨年度の成果である、疎な多項式計画問題に対するあるアルゴリズムがFRAに他ならないことを指摘した論文が改訂を経て発行された。一般の錐線形計画に対するFRAの性質を調べた論文は現在も査読中である。 また、以前指摘した、POPに対するSDP緩和の持つ不思議な性質に関する論文もウェブ上で先に発行された。(この後、紙による印刷が行われる予定。)この性質とは、SDPの最適値を求めることが非常に困難であるときに現れ、SDPのソルバーが返す答えが最適値とかけ離れた値であるのに、その返された値は計算したいPOPの最適値となっている、という性質である。今年度はこの現象に関して理論的に追究し、その結果、多項式の係数に対する小さな摂動と、それを含む多項式の自乗和多項式表現との関係を証明した。この関係は「不思議な性質」がかなり一般的な状況で成り立つことを示唆するものである。さらに、この証明の過程で、新しい疎性を用いたSDP緩和に自然にたどり着いた。これは従来からある「相関疎性」を用いた手法よりも大幅にSDPのサイズを小さくできる可能性がある。現在も引き続き、これについて研究をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
錐線形計画問題に対するFRAに関する理論はかなり整備され、従来の様々な手法がFRAで解釈できること、また、FRAを使うとさらに効率よくSDPを縮小できることがわかってきた。また、「数値的に安定していなくても、正しい答が得られる」という性質を持つことも理論的にかなり解明されてきた。一方、FRAを完全に適用して安定したSDPを得る、という当初の目標に関しては、未だ数値誤差の処理がうまくいかず、成功していない。よって「おおむね順調」というレベルと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2つの独立した方向が考えられる。1つは、FRAを完全に適用することで数値的に安定なSDPを作り出す方向の研究、もう1つは、特にPOPに特化する話題だが、あえて誤差を交えたモデルを考慮することにより、SDPの最適値を計算せずにPOPの最適値を計算することを追究するものである。現在示唆されていることとしては、POPに対すうSDP緩和はそのようなうまいモデルになっているようであるが、より理論を深めるとともに、より有効なモデルを打ち立てる必要があると思われる。
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