研究概要 |
本研究は,パラメータ同定問題を対象として逆問題の不適切性について検討を行うもので,観測された変位・応力等の値から非均質場の弾性材料,摂理等の不連続面の発達した岩盤を対象とした不連続性材料,およびクリープ等に見られる時間依存性を示す材料の物性値を逆に推定するパラメータ同定解析に離散値系ウェーブレット変換の特性の応用を試みるものである.ウェーブレット変換を導入した同定解析の定式化を行い,導出した理論をもとに数値解析プログラムを開発して,種々の数値シミュレーションを通して安定かつ効率的な逆解析手法を開発することを目的とする. 本年度は主に弾性問題ならびに不連続材料を対象にウェーブレット変換を用いた逆解析アルゴリズムの開発と手法の有効性について基礎的検討を行った. 1.逆問題のシステム方程式に対してウェーブレット変換を施し,未知物性値をパラメータとした近似逆行列を導出する理論定式化を行い,導出した理論をもとに数値解析プログラムを開発し,基礎的な数値シミュレーションにより理論の有効性を検証した. 2.ウェーブレット変換を適用することにより弾性問題,不連続材料ともに未知パラメータの数mと観測データの数nが等しいn=mの場合,およびn>mの場合には,精度良い同定解が効率よく得られること,また,不適切なn<mの場合でも近似同定解が得られることが確認できた. 3.種々の数値計算の結果,低次よりも高次のウェーブレット基底関数を用いる方が安定して解が得られること,ウエーブレット変換の圧縮率は小さい方が精度良い同定値が得られることが判明した.
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