研究概要 |
本研究では、鉛直座標の1次関数で表される温度場の中に置かれた直方体容器が水平に置かれている場合と水平面に対して傾いている場合を考え、その中の流体の熱対流の発生について調べた。具体的には、熱対流の発生する温度勾配や発生した対流パターンの容器の形状や姿勢に対する依存性を調べた。 この研究においては、まず熱対流の新しい数値計算法として、ベクトルポテンシャルと変形チェビシェフ多項式系を用いたスペクトル法を提案し、水平に置かれた立方体容器での熱対流の発生に関する先行研究の結果と比較することによって、この方法が高い精度をもつことを確認した。この方法は、直方体容器における定常あるいは非定常の熱対流の数値計算法として有効であると期待される。 次に、上記の方法を用いて直方体容器が水平に置かれている場合の熱対流の発生について調べた結果、次のことがわかった。(1)容器の高さに対する水平2方向の長さの比をa,bとしたとき、対流の発生する温度勾配βは、a,bが増加するにつれて減少する。(2)aとbの差が大きいときには、発生する対流は面間距離が短い方の側面に対して垂直な軸をもつ渦運動に近いが、そのときの大部分の流体粒子の運動は2次元的ではない。(3)aとbが4程度でその差が小さいときには、これまでの研究で知られていなかった新しい対流パターンが発生する。 また、直方体容器を水平面に対して傾けた場合の熱対流の発生についても調べた結果、次のことがわかった。(1)aとbの値を固定して容器を傾けていくと、多くのa,bに対しては、対流の発生する温度勾配βが変化すると同時に、発生する対流パターンの対称性がある傾き角で変化する。 以上の結果によって、これまで未解明であった長方形容器内の熱対流の発生とそのときの対流パターンに関する理解が進み、このことは熱対流に関係した応用的研究のためにも役立つと期待される。
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