研究概要 |
本研究では、鉛直座標の1次関数で表される温度場の中に置かれた直方体容器が水平に置かれている場合と水平面に対して傾いている場合を考え、その中の流体の熱対流の発生する温度勾配や発生した対流パターンの容器の形状や姿勢に対する依存性を、スペクトル法を用いて調べた。 まず、水平に置かれた直方体容器の高さに対する水平2方向の長さの比aとbがa<6,b<6を満たす場合に発生する熱対流パターンについて、次のことがわかった。(1)aとbの差が大きいときには、発生する対流パターンは面間距離が短い方の側面に対して垂直な軸をもつ2次元渦運動に似た3次元的なものとなる。そして、容器の中心付近ではこの3次元性は弱く、aとbの比が1から離れるほど3次元性は弱くなる。(2)a=b=1の立方体容器の場合は側面の1方向に軸をもつ渦パターンに近いが、a=bの条件を満たすようにa,bの値を増加させていくと、2つの側面方向から見た渦の数が(2,2),(2,3)[あるいは(3,2)],(3,3)...と交互に増加してくパターンが順次見られる。とくにa=b=4付近では(3,3)の渦パターンが発生する。 また、直方体容器を水平面に対して傾けた場合には次のことがわかった。(1)aとbの値を固定して容器を傾けていくと、多くのa,bに対しては、発生する対流パターンの対称性がある傾き角で切り替わる。とくにa=1,b=3やa=1,b=4の場合には、この切り替えが2回起こる。(2)立方体容器の1つの辺を水平に保ったまま容器を傾ける場合には、傾き角が45度のときに対流の発生する温度勾配が最小となる。また、この容器を適当な角度で2方向に傾けることによって対流の発生する温度勾配をさらに小さくできる。したがって、立方体容器内の対流を起こしやすくするためには、適当な角度で傾けるのが良い。
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