ひずみ不整合に基づいたき裂発生モデルを構築し、高強度合金の極低応力振幅における疲労き裂発生について統一的・学術的理解を導き、強加工などの非平衡プロセスを利用して製造する高強度合金の疲労破壊と長寿命・安全設計への材質制御の指針とつなげることを最終目標としている。平成22年度は、局所的ひずみ勾配を形成すると予測する疲労軟化組織領域と弾性変形領域との分離およびそれらの領域の応力状態について解析し、計算手法により変形モードと弾性場蓄積の関係について検討した。 (1)混粒組織における疲労軟化挙動と疲労強度 Ti合金およびオーステナイト鋼を用い、加工熱処理により組織形態の異なる材料の疲労破断試験を実施し、疲労強度とき裂発生挙動、マクロな変形挙動およびミクロな変形組織形成について比較データを得た。また、Fe-3mass%Si鋼に加工熱処理を施し、丸棒試験片によるS-Nデータを取得した。 (2)不均一変形モード解析によるひずみ勾配形成 完全拘束モデルを基礎とし、臨界せん断応力の大小による変形モードの選択を考慮した変形・結晶回転の解析を適用し、Ti合金(IICP)における不均一変形がもたらす(0001)粒応力の形成を考察した。また、オーステナイト鋼における{111}<110>すべりの組み合わせによる粒応力の形成に適用し、内部疲労き裂形成との整合性を得た。 (3)中性子散乱回折を用いた疲労軟化領域と弾性場形成領域の応力状態 Ti合金に中性子回折実験を適用し、引張変形におけるバルクな応力状態、すなわち、軟質粒と硬質粒における粒応力の違いの検出に成功した。
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