研究概要 |
稠密六方格子構造を有するマグネシウム(Mg)合金はすべり系の数が少なく,結晶のすべりに加えて双晶変形が極めて重要な変形機構である.また,押出しや圧延によって製造された展伸Mg合金は結晶のc軸が加工方向と垂直に配向する集合組織を呈することが特徴の一つである.本研究では,Mg合金の疲労変形挙動及び疲労強度特性に及ぼす双晶変形及び変形異方性の影響を明らかにし,軽量化機器・構造物の高信頼性・安全性を保証した疲労設計指針を確立することを目的とした.展伸Mg合金AZ31,AZ61及びAZ80を用いて全ひずみ制御及び応力制御低サイクル疲労試験を室温・大気中で行い,疲労変形挙動及び疲労寿命評価法について検討を行った.得られた主な結論は以下の通りである. 1.全ひずみ制御疲労試験のヒステリシスループは引張側と圧縮側で顕著な非対称性を示し,引張りの平均応力を生じた.一方,応力制御疲労試験のヒステリシスループの非対称性は小さく圧縮の平均ひずみを生じた.平均応力及び平均ひずみは供試材の引張りと圧縮の耐力の比に依存して生じる. 2.圧縮荷重除荷時に現れる擬弾性回復ひずみは双晶変形の可逆性に依存し,その大きさは引張荷重除荷時に比べて大きく,また,全ひずみ制御疲労試験の方が応力制御疲労試験に比べて顕著に現れる. 3.塑性ひずみ幅と疲労寿命の関係(Coffin-Manson則)は両対数線図上で良い直線関係を示したが,供試材及び疲労試験方法の依存性を示し,統一的な疲労寿命評価は不可能であった.これは疲労寿命に平均応力及び平均ひずみの影響が現れた結果であると推察された. 4.Coffin-Manson則の指数及び定数は供試材及び疲労試験方法によって異なる値を示し,引張りと圧縮の耐力の比に依存して変化する. 5.ヒステリシスループの面積から求められる塑性ひずみエネルギー密度と引張側の弾性ひずみエネルギー密度の和で与えられる全ひずみエネルギー密度を用いて3供試材及び両制御疲労試験の疲労寿命を統一的に整理可能である.
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