実用金属材料中で最軽量であるマグネシウム合金を用いた軽量化機器・構造物の高信頼性・安全性を保証した疲労設計指針を確立することを目的として,以下の2点について実験的検討を行なった. 1.平均粒径40μmの微粒子ショットピーニング処理(FPSP)を施した3種類のMg合金AZ61,AZ80およびAZ80T5の片持ち回転曲げ疲労試験を室温・大気中で行い,疲労強度改善効果について検討を行なった.(1) 試料表面から約50 μmの深さの範囲に圧縮残留応力の付与および硬さの上昇が測定された.また,極点図測定の結果,押出しによって生じた結晶のc軸配向はFPSPによって分散化する傾向を示した.(2) FPSPを施したAZ80およびAZ80T5は高応力振幅域で表面破壊を,低応力振幅域では結晶のすべりに起因する内部破壊を示した.一方,AZ61は実験を行った全応力振幅域で表面破壊であった.(3) 表面粗さを除去したAZ80およびAZ80T5の疲労強度向上は高応力振幅域のみで認められ,これは未処理材に現れる二段折れ曲がりS-N曲線の水平部以上の領域であった.AZ61は全領域で疲労強度の向上効果が認められた. 2.展伸Mg合金の切欠き感受性を評価するために,60°V型環状切欠き試験片の片持ち回転曲げ疲労試験を室温・大気中の実験室雰囲気で行った.切欠き部半径は0.5,0.3,0.1および0.05mmの4種類とした.(1) AZ31,AZ80およびAZ80T5の3供試材共に,停留き裂は認められず,分岐点は現れなかった.(2) 疲労における切欠き係数は鈍い切欠きにおいてはアルミニウム合金や低炭素鋼と同程度であったが,鋭い切欠きに対しては両材に比べて大きくなり敏感であった.(3) T5の時効処理を施したAZ80T5は未熱処理のAZ80に比較して静的強度は高いが,切欠きに敏感であり疲労強度は低下した.
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