研究概要 |
チャイルドシート使用中の子ども乗員の自動車側面衝突事故では,子どもの頭部がドアに衝突し,重篤な傷害を受ける頻度が高い.現在,子どもの側突事故時の傷害防止のためにISOや国連ではチャイルドシートの側面衝突試験法が検討されている.しかし,これらの試験では頭部への衝撃負荷が小さく,頭部傷害が評価できない.本研究は側突事故時の子どもの頭部傷害の要因を明確にすることを目的としており,申請者らが考える仮説(側突事故時の子どもの頭部傷害の要因はチャイルドシートの誤使用と子どもの初期姿勢による)を子どもの衝突ダミーと人体モデルを用いた有限要素解析,およびダミーを使った台車実験によって明らかにする. 本年度は米国の事故データにもとづく代表的な事故形態をもとに,車対車衝突実験を実施した.前突車を衝突角度45度にて側突車後席ドアに対して衝突させた.後席衝突側に着座させた子どもダミーは,頭部がシェルから外に飛び出し,頭部がサイドウィンドウガラスおよびドアシルに衝突した.その結果,頭部傷害値は基準値である700を超え,子どもが側突時に重篤な傷害を受ける危険性が示された. 実車試験のQ3sの挙動を再現するためのスレッド試験の試験条件を得た.インパクトドアをCRSに衝突させる方式とし,スレッドの斜め方向速度成分が,側突車の横方向速度とおおよそ一致するようにスレッド速度を与えた.さらに,側突車のロール運動,ダミー足部でのドア侵入を反映させた.これらの結果,子どもダミーの頭部,体幹,下肢の挙動は実車試験と同様となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,実際の側突事故において子どもの頭部がチャイルドシートのシェルから外に出て,客室内に衝突して重篤な傷害を受けるメカニズムを明らかにすることにある.実車実験とスレッド試験によって子ども乗員の挙動に影響を及ぼすのは,前方・横方向成分を含めた車両速度の時間変化,およびCRSとドアの接触位置であることが明確となった.
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今後の研究の推進方策 |
実車実験とスレッド試験によって,側突事故において子どもの頭部がどのようにチャイルドシートのシェルから外に出て,客室内に衝突するかを示すことができた.今後,シミュレーションや台上試験によって,チャイルドシートのミスユースや子どもの初期姿勢がどのように頭部軌跡や傷害に影響を及ぼすかを明らかにする.
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