研究概要 |
部品接触部の疲労強度はフレッティングによって顕著に低下し,水素ガス中ではさらに低下する.現在までに低下原因の一つが,凝着部に発生する微小き裂に関連することを明らかにした.さらに,凝着部に発生する微小き裂について発生・進展の力学条件を明らかにし,水素ガス中フレッティング疲労限度低下の下限の存在ついて検討すること,水素利用機器の部品接触部の疲労強度設計で考慮すべき疲労強度低下量の下限値の評価手法を確立することが必要である.本年度は,過去のSUS304に加えて,耐水素材料であるSUS316Lを用いて水素ガス中フレッティング疲労試験を実施した.その結果,水素ガス中ではSUS304と同様に凝着を生じ凝着から多数の微小き裂が発生する,水素ガス中ではフレッティング疲労強度は低下するがその度合いはSUS304に比べて少ない,水素チャージはSUS316Lのフレッティング疲労強度低下をもたらさないことが明らかになった.これらの結果によりSUS304では水素ガスは凝着と微小き裂の発生だけでなく,疲労強度そのものに影響を与えていることも明らかになった.研究計画に基づき機構解明のために微小き裂の進展下限界特性を調べた.試験片は疲労試験前に予め水素をチャージしたもの,していないものを用意して,水素ガス中と大気中で疲労き裂進展試験を行った.試験材料はSUS304とSUS316Lである.その結果,水素チャージによりき裂進展の下限界応力拡大係数ΔK_<th>はSUS304では低下し,SUS316Lでは低下せず,SUS304の顕著なフレッティング疲労強度低下には水素によるΔK_<th>が一因であることが示された.次年度に向けて凝着部の力学特性を評価する試験機を構築中である.
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