H22年度は初年度であり、「ナノ構造化によるナノ表面テクスチュア創成と表面力学特性制御」を目標に、1)ナノカラム構造化のプロセス・パラメータ最適化、2)ナノカラム構造化へのドーピングの影響、3)鉄イオン注入DLCサンプルの作成とEBによるナノ構造化の研究を進め、その中で、「研究実施計画」に盛り込んだAFMの測定系の検討、表面状態の定量評価法の検討を進めた。以下に、上記3つの研究内容について説明する。 1) 出発DLCコーティング条件、EB照射条件などをパラメータとして変化させ、その実験的に吟味し、ナノカラム構造化の特徴(ラマン測定・TEM観察・In-lens-SEM測定・ナノインデンテーション測定で明瞭な特徴)を示すパラメータ領域を求めた。これにより、ナノカラム構造の再現性と用途に応じた最適化が可能となる。 2) 高温での耐久性の向上、すなわちナノカラム構造を保持しつつ、硬度・強度、耐剥離靭性に優れるナノカラム構造化DLC膜を得るために、金属種をドーピングしたサンプル作成を行った。その結果、酸化物ガラス(BK7)の100回連続高温成形実験に耐え得るナノカラム構造化LDC膜の作成に成功した。今後、この再現性と他の金属種の影響も合わせて検討する。 3) 鉄イオンを出発DLC膜に注入し、EBにより注入鉄原子の凝集にともなうナノカラム構造化を目標に、日本原子力機構、産業総合技術研究所と連携を開始し、予備実験にて、サンプル準備の最適化を行った。今後、本格的なEB照射による鉄原子の凝集挙動、ならびにそれに伴うアモルファスカーボンの規則化現象を、実験的に記述していく考えである。
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