研究課題/領域番号 |
22560090
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
中曽根 祐司 東京理科大学, 工学部・第一部・機械工学科, 教授 (10266918)
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キーワード | バルクアモルファス / 金属ガラス / 発光 / 疲労 / き裂進展 / せん断試験 / デジタル画像相関法 / シェアリップ |
研究概要 |
本研究では、Zr基バルクアモルファス合金の疲労の基本特性および疲労き裂進展機構を調べるとともに疲労き裂近傍や破面等の強変形部における結晶化の機構およびき裂面からの発光機構等、このバルクアモルファス合金に特有な新しい破壊挙動および破壊機構解明することを目的とする。本年度の主な成果を項目ごとに以下にまとめる。 (1)バルクアモルファス合金の疲労の基本的特性および疲労き裂進展機構の解明 き裂がランダムに配列した原子集団の中の最弱部を選択しつつ進展するため、分岐、屈曲、停留を繰り返し、試験片表面と内部で進路経路が異なる複雑なき裂進展挙動を示した。このため、き裂進展速度da/dNと応力拡大係数幅ΔKの関係、log(da/dN)-log(ΔK)線図は、破壊力学でよく知られた逆S字型曲線で表されるのではなく、試験片ごとに異なるジグザグ状の曲線を示した。また、き裂開閉口現象は応力比R≦0.15で観察されたが、R≧0.2で観察されなかった。 (2)疲労き裂近傍や破面等の強変形部における変形部における変形誘起結晶化の解明 製造時に故意に結晶化させた素材部分のX線回折プロファイルと変形により結晶化した場合のそれと比較した。前者の場合、アモルファス合金に見られるハローパターンは見られず、結晶形を表す回折ピークだけが観察されたも他方、後者の場合には、ハローパターンに結晶化を起こしたと思われる小領域部分の回折ピークが重畳していた。以上より、破面上の回折ピークは製造時の結晶化によるものではなく、き裂進展に伴う強変形によって生じた結晶化によるものと推察された。 (3)疲労き裂面からの発光機構の解明 高速度カメラを用いて試験片の破談挙動を観察した結果、き裂の複数個所から花火の発生が見られた。破断直前の火花の観察は再現性良く観察されたが、き裂に沿って多数箇所の発生が観察される場合や、少数箇所の発生しか観察されない場合もあった。また、火花の発生量についても大きなばらつきがあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発光現象の観察等に関しては予定通り研究が進められた。この意味で、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。しかし、これまでの研究によって、発光機構の現象論的説明をすることはできたが、その機構の物理モデルの開発までには至っていない。今後の研究の重要な方向性の1つとして、発光現象を再現できる物理モデルの開発があげられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、破壊に伴う発光現象の物理モデルの構築を図る。現時点では、相対する破面間のすべり摩擦により発光が起こると考えているが、今後の研究でこの発火機構の確認を行うことが最重要事項として、研究を進めていく計画である。
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