研究概要 |
ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)は安価で耐食性を有することから,各種貯槽や反応槽など耐食容器として広く使用され,既に30年以上の使用実績がある.しかし,高度経済成長期に多数製造されたGFRP貯槽は近年老朽化が進んでおり,適切な補修・建替えを行なわず放置すれば突発的な破壊に至る危険性が指摘されている.本研究では,入力超音波の周波数をコントロールすることで,貯槽側壁面内を伝播する波の板厚方向への浸透深さを変化させ,その伝播特性に基づき貯槽の内面劣化を検査する. 本年度は超音波の送受信法を検討するとともに,周波数による波の浸透深さ変化の実測を行った.材料の超音波検査法としては水深法が多用されているが,実物貯槽への適用性を考慮して,試料と超音波探触子の間に水袋を配置して局所的に水深状態を実現する局所水深法を検討し,その有効性を確認した.また,板材の表面から入射された超音波の板厚方向への浸透状態を調べるため,ペンシル型トランスデューサを用いた断面変形計測装置を製作し,実物貯槽の評価に適用した.貯槽側壁は耐薬品性に優れた耐食層と強度部材となるFW(フィラメントワインディング)層からなる積層構造を有しているが,外面FW層から入射された波が耐食層まで十分浸透せず,内面劣化層の評価が困難な場合があることが分かった.検討の結果,内面劣化層の検査には貯槽軸方向の測定が適していることを見出した.
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