研究概要 |
本研究の最終的な目的は,これまで十分な研究が行われていなかった軸直角方向振動を受けるボルト締結体の疲労破壊の問題に対して,ボルト締結体の疲労強度を予測し,安全設計の指針を確立することです.平成22年度の研究実施計画は,主として「ボルト締結体を設計する上で必要な各種締結パラメータが,ボルト締結体の軸直角方向疲労強度に与える影響」の明確化を行うことでした.この計画に関しては概ね終了しましたが,当初予定の4項目の締結パラメータの内に1項目について実験が完了できませんでしたので,その項目については,23年度に実験する予定です.なお,当初23年度に計画していた「軸直角方向振動を受けるボルト締結体の見かけの疲労強度予測法」については,その基本的な手法を22年度に前倒して確立し,その成果は日本機械学会論文集に掲載されました.また22年度に,23年度に実施予定の「軸方向振動と軸直角方向振動を同時に受けるボルト締結体の疲労試験」に用いる実験装置を設計・製作しました.ここで,「軸方向振動と軸直角方向振動を同時に受けるボルト締結体の疲労強度に関する実験」は,これまでの軸直角方向振動のみによる疲労試験から,より実問題に則した問題を取扱うための基礎的な試験であり,本研究の最終目標である「あらゆる荷重形態が作用したボルト締結体の疲労設計の確立」に向けての実験です.なお,この多軸振動を同時に受けるボルト締結体の疲労強度に関する研究は,これまでほとんど行われておらず,本研究で得られる結果は,ボルト締結体の信頼性設計に対して極めて有用なデータとなります.さらに,自動車用ホイールに用いられるテーパナットを用いたボルト・ナット締結体についても実験を行っており,この実験は,23年度まで継続して行います.以上の結果から,22年度は概ね計画通りの実績を得ることができました.また22年度に提案した「軸直角方向振動を受けるボルト締結体の見かけの疲労強度予測法」では,軸直角方向振動を受けるボルト締結体の新たな疲労設計指針を示すものであり、大変有益な成果と考えています.
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