研究概要 |
本研究は,安価に製作でき比較的弱い光量においても発電可能なエコ発電素子として注目されている色素増感太陽電池に利用される導電性透明樹脂電極の太陽光入射面および酸化チタン膜の吸着面に対し,転写加工によるミクロンおよびサブミクロン規模の表面凹凸構造を創成し,太陽光の反射防止および酸化チタン膜の吸着力と吸着量を増大させることにより,太陽光発電効率の格段の向上を実現することを目的とする.そのために,導電性透明樹脂電極の転写加工用モールドを微小振動切削と陽極酸化の組合せによって製造し,それを用いた転写加工により,導電性樹脂の両面にミクロンおよびサブミクロン規模の表面凹凸構造を創成する.平成23年度における検討内容および得られた成果は次のとおりである.1)熱転写(ホットエンボス)用装置を製作し,前年度までに製作したミクロンおよびサブミクロン規模の表面凹凸構造を有する金型(切削後に陽極酸化を施した)を用い,導電性透明電極両面にミクロンおよびサブミクロン規模の表面凹凸構造の転写を試みた.その結果,約20μmの規模の逆三角錐状の凹構造とその周囲に数μmの規模の凸構造を有する表面凹凸構造が約40μm周期で転写された.さらにそこには,転写性に若干の課題は残るもののサブミクロンオーダの規模のオレンジピール構造(金型の陽極酸化により効果)が重畳していることも確認された.2)転写加工の結果を受け,より微細な表面構造を取得するため,金型の振動切削と陽極酸化条件を再検討し,数μmの規模と十数μmの周期の三角錐状の表面凹凸に500nm未満の規模のオレンジピール構造を有する金型を製作した.そして,この金型を用いた熱転写加工により,透明樹脂電極上に金型形状を反映したより微細な表面凹凸構造を転写した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,平成23年度までに実際に製作してきた表面微細構造を有する透明電極を用いて色素増感太陽電池を製作するとともに,それによる発電性能を評価し,提案手法の有効性を検証するとともに,助成期間において得られた成果を報告書にまとめる方針である.
|