研究課題/領域番号 |
22560110
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
稲垣 耕司 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50273579)
|
キーワード | 触媒援用化学エッチング / CARE / SiC / Pt / HF / 第一原理分子動力学シミュレーション / 活性化エネルギー / NEB法 |
研究概要 |
今年度は、エッチングの主要な反応経路であると考えられるSiCのステップエッジでのHF分子の解離吸着、及びGaNのステップエッジでのH_2O分子の解離吸着における反応バリアの計算を行った。SiCについては、表面終端構造がOH終端以外にもF終端構造をもっていることが、実験グループのXPS表面測定により明らかとなったため、F終端表面の解析も行った。F終端の方が表面Si原子を正に帯電させる能力が高いため、解離吸着反応のバリアがやや低いことが明らかとなった。また、H_2O分子を1つ加えた系の解析を行い、HFのプロトンリレーを介して解離吸着することにより、障壁が低いことが分かった。これは昨年度より検討していたF^-の吸着状態を含む系でのHF分子解離吸着プロセスに似たものであり、そのモデルの有効性が改めて確認された。しかし、これらは単にHF水溶液中での反応解析であり、CAREにおけるエッチングの促進を示すためには、触媒の化学的作用・機械的作用の効果について研究を進める必要がある。触媒金属を置いたテスト計算を行っており、次年度以降の解析が期待できる。GaNに関しては、まず終端構造を第一原理計算で解析し、表面Ga原子のうち3/4の割合でOH終端され、1/4でH_2O終端されている構造が安定であることが分かった。表面へのH_2O解離吸着反応についても解析し、1eV強のバリアを超えれば解離吸着反応を起こすことが分かった。2つの水分子の解離吸着によりエッジ部のGa原子はエッチングされ水酸化物のような形で表面に吸着することが分かった。この反応も1eV強のバリアをもち通常環境下ではほとんど起こらない。触媒の作用についての解析を開始しており、化学的作用・機械的作用の効果の解析をさらに進める準備が整った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、CAREプロセスのエッチング反応、すなわち、単に水またはエッチャントを含む水溶液に浸漬させただけでは生じないエッチング反応が、触媒との接触により誘起されるのがなぜであるか解明することを最大の目標としている。現在まで、水またはエッチャント分子の解離吸着による表面原子除去プロセスについて明らかとなってきている。触媒を含めた系における解析にも着手しており、最終年度におけるメカニズム解明に期待が持てる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、CAREプロセスのエッチング反応、すなわち、単に水またはエッチャントを含む水溶液に浸漬させただけでは生じないエッチング反応が、触媒との接触により誘起されるのがなぜであるか解明することを目標としている。今後は、水またはエッチャント分子の解離吸着による表面原子除去プロセスにおける活性化障壁を触媒が低減する機構を明らかにしたい。そのために、加工物表面-液-触媒で構成されるモデルの計算を進め、触媒の役割を解明する。
|