一昨年度,昨年度に引き続き,小さな円孔を規則的に配列(正三角形格子配列または正方形格子配列)した多孔質板をコア層とし,その両面に薄いスキン層を拡散接合した3層構造の軽量積層板である多孔質積層板(素材:純銅板)について等塑性仕事曲面や成形限界線図(FLD)の調査を行った. 成形限界に関しては,スキン層厚さが成形性に及ぼす影響について注目した検討を行った.スキン層厚さを0.2,0.4,0.6mmと3段階に変化させた多孔質積層板(多孔質コア層厚さは0.6mmで固定)とそれぞれの構成素材について張出試験による成形限界調査を行い,FLDを取得した.多孔質コア層の成形限界は極めて低いが積層板の成形限界はスキン層と同等のレベルとなり,スキン層を積層することによる成形限界向上効果が確認された.またスキン層の成形限界には板厚依存性があり,厚さが大きいものほど成形限界が高くなった.そのため積層板の成形限界もスキン層厚さが大きいものほど高くなった.ただし多孔質コア層の剥離・断裂が生じる限界ひずみが存在するので,それ以上の成形限界向上効果は見られない. 等塑性仕事曲面(マクロ的降伏曲面)については,主として解析的検討により昨年度までに得られた実験結果,計算結果の見直しを行った.素材銅板の等塑性仕事曲面はほぼvon Misesの降伏曲面に一致した.多孔質コア層の等塑性仕事曲面については,その曲面形状は等二軸引張状態とその近傍で降伏応力が低下する(von Misesの降伏曲面の内側に入る)傾向を示し,マクロ的降伏挙動に対する静水圧応力の寄与が見られた.また若干ながら孔の最密配列方向の応力とその直交方向の応力の比が0:1となる方向では(1:0となる方向よりも)応力レベルが高くなる異方性が見られた.多孔質積層板の等塑性仕事曲面はスキン層の積層効果により概ねvon Misesの降伏曲面に一致した.
|