研究概要 |
放電加工による成形が可能な導電性(焼結)ダイヤモンド(PCD)のステンレス鋼板の加工工具への適用を検討した。具体的には、PCD製の深絞り工具(ダイとしわ押え)を組み込んだ順送金型を用い、SUS304ステンレス薄板を被加工材とし、5,000回の無潤滑連続深絞り実験を行った。その結果、工具への被加工材の凝着やこれによる成形品側面への傷の発生もなくなり、安定した無潤滑深絞り加工が行えることを明らかにした。 また、PCDとcBNの焼結体工具による、深絞り容器の内面バニシング実験も行った。このバニシングでは加工中に工具と材料との摩擦により高い発熱が生じるため、従来の超硬工具を用いた加工では、少ない加工回数で工具への被加工材の凝着が増大し、その結果、成形品内面に大きな傷が発生し、内面精度が悪化する。これに対し、60℃以下の条件下では、PCD製工具を用いると、10,000回以上まで優れた表面性状の成形品が得られることを明らかにした。ただし、これ以上の高い温度まで発熱が生じる加工においては、cBN製工具のほうが製品精度悪化防止効果が高いことが判明した。 さらに、打抜きや穴あけなどに用いるせん断工具へのPCD製工具の適用性についても調査した。せん断では、工具刃先には大きな衝撃力が作用するため、摩耗以外にチッピングが発生しやすいといった問題もある。そこでまず、PCD製打抜き工具によりA3004アルミニウム合金の無潤滑打抜き実験を行った。その結果、工具鋼製工具では2,000回程度の加工回数になると、切口面に大きなかえりが発生するのに対し、PCD製工具による打抜きでは、10,000回以上まで安定して良好な切口面が得られ、チッピングなどの工具不良も発生しないことを明らかにした。
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