新型の航空機における構造部材へのカーボンファイバーの使用率は50%以上を占め、大量生産が開始されつつある。カーボンファイバーの加工にはダイヤモンドコーテッド工具(ドリル・エンドミル)が不可欠であり、基材には超硬合金(WC-Co合金)が用いられる。超硬合金は高価であるというコスト面での制限だけでなく、戦略元素であるタングステン、コバルトから構成されており、代替えできる素材は今のところ存在しない。本研究は使用後のダイヤモンドコーテッド工具を対象に、効率的にダイヤモンド膜の除去を行う大気圧プラズマ処理技術を確立し、再生コーティングにより基材のリユースを実現し生産コストの低減のみならず戦略元素の有効利用を実現することを目的とした。 平成24年度に得られた研究成果は以下の通りである。 (1) 手持ちのマイクロ波プラズマ発信器(1.2kW)を利用して自作した大気圧プラズマトーチについて、プラズマの再現性を向上させるために添加ガス導入用のインナーガラスチューブの位置を微調整できるようなマイクロメータヘッドを用いる機構を付け加えた。 (2) アルゴンプラズマ中に酸素および水素の添加ガスを加えた場合の、効率的な活性種の生成が可能なノズルの形状とインナ-チューブの位置関係を最適化した。 (3) ダイヤモンド膜への照射実験によりエッチングの効果について検討を行った。Arガスをベースに水素、酸素を加えた大気圧プラズマの発光スペクトルとエッチング状況の観察を行い、酸素添加プラズマのエッチング効率が高い事を明らかにした。さらに、ダイヤモンド膜の下地基板の質量によりエッチング時の基板温度が異なることから、基板温度がエッチング効率に及ぼす効果についても検討を行った。
|