研究課題/領域番号 |
22560124
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
高木 誠 愛知工業大学, 工学部, 教授 (40288428)
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研究分担者 |
松室 昭仁 愛知工業大学, 工学部, 教授 (80173889)
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キーワード | シリコン単結晶 / ナノスケール加工 / MEMS/NEMS / 走査プローブ顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 透過型電子顕微鏡 / ナノインデンター / 加工硬化 |
研究概要 |
MEMS/NEMSを構成するシリコン結晶部材の強靭化、疲労強度の向上、耐摩耗性の向上を実現するために、走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いた超微細加工技術を発展させて、シリコン表面を高強靭化する新たなナノスケール加工技術を開発することが本研究の目的である。 今年度は、SPMの原子間力顕微鏡(AFM)モードを利用して微小荷重で引掻き加工を行なったシリコン単結晶の表面に、ナノインデンテーションを行い、加工に伴う表面付近のナノスケールの機械的性質の変化を調べた。さらに加工環境を変化させてナノスケールの機械加工や電圧印加加工を実施した。またそれらと並行して水素イオン注入によるシリコン単結晶表面の強靭化についても調べた。得られた結果を以下に示す。 (1)SPMのAFMの機能を用いて、微小荷重200μNを加えながらシリコン表面を微細加工した。面状に加工したシリコン表面の微小領域の機械的性質をナノインデンターで測定した結果、硬度が上昇して加工硬化と思われる傾向が見られた。また、加工断面をTEMで観察して構造変化を調べた結果、転位の発生が観察された。 (2)加工環境を変えて大気中だけではなく水中および真空中や500℃の加熱下でAFMにより電圧印加加工を行った結果、点状および線状の加工ができた。その断面をTEM観察した結果、加工部周辺に歪みや格子欠陥が見られた。 (3)種々の注入エネルギーで水素を注入したシリコン単結晶を試料として、ナノインデンターを用い硬度や弾性率の測定を行って水素イオン注入量と機械的性質との相関を調べた結果、シリコン単結晶の硬度が上昇する傾向が見られた。その断面をTEMで観察して構造変化を調べた結果、水素イオン注入で生じた格子欠陥層が変形の障壁となっている様子が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主目的である、走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いた超微細加工技術によるシリコン単結晶の強靭化を、微小荷重で引掻き加工を行なうとシリコン単結晶の表面が硬化する傾向を、ナノインデンターを用いて明らかにしたことでほぼ達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いて超微細加工を行う際の加工条件(荷重、電圧等)や加工環境(温度、雰囲気など)をさらに細かく変化させて、それに伴う加工形状や組織・構造の変化、機械的性質の変化を詳細に明らかにしていく。それらの結果をもとに、加工メカニズムの推定を行い、現象の普遍性や物理的意味を明確にしていく。
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