研究概要 |
高齢者の身体・生理・知能に基づいて生起する「行動」を「見える化」するための「高齢者デジタルビヘイビアモデル(EDBM)」を開発し,生産の場で高齢者が作業し,行動する際の事前評価方法の確立を目的とし,まずは生産ライン方式と個別生産方式のそれぞれにおける高齢者の特性を調査した。その結果,生産ライン方式では,高齢者の背筋力,脚力,敏捷性,作業姿勢などの体力と記憶,判断,巧緻性などの行動力を合わせて14項目の特性値で整理できることがわかった。一方,個別生産方式では,体力,カン・コツ,スキルに大分類することができ,体力では重量物作業や作業姿勢などの7項目,カン・コツでは5項目の技能評価基準,スキルでは8項目のスキルマップで整理できることがわかった。それら各項目について基準値を設定することで,高齢者にとって適作業であるかどうかを事前評価することができる。また,デジタルヒューマンモデルを用いることによって,それらを見える化(可視化)する方法を確立することによって,誰にも容易に評価できることになる。 他方,高齢者の身体および生理の観点から,作業中の腰痛発症の有無を可視化するため,椎間板圧迫力を推定できるデジタルヒューマンモデルを開発した。手や肩にかかる負荷と作業姿勢から椎間板圧迫力を推定し,それが高齢者向けの基準値を超えているか否かによって腰痛が起こるか否かを判定できる。これによって,重量物作業が高齢者にとって安全であるかどうかを事前に評価できるようになった。
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