研究概要 |
高齢者の身体・生理・知能に基づいて生起する「行動」を「見える化」するための「高齢者デジタルビヘイビアモデル(EDBM)」を開発することによって,生産の場で高齢者が作業し,行動する際の事前評価方法の確立を目的とし,本年度は高齢者の背筋力,脚力,敏捷性,作業姿勢などの体力と記憶,判断,巧緻性などの行動力を合わせた14項目の特性値から,作業負荷を定量化するデジタルヒューマンとインタフェースの構築に取り組んだ。 また,高齢者の腰痛の問題に着目し,タブレット型PCを用いて無理な作業姿勢から腰痛が発症するかどうかを容易に判定できるカメラを開発した。具体的には,作業者側方から作業姿勢を撮影し,その像をタブレット型PCのディスプレイに表示し,指で関節点を順にタッチすると2次元のスティックピクチャが表示され,同時に椎間板圧迫力が算出されて,腰痛判定結果が表示される。タブレット型PCはモバイル性に富むため,工場の現場において実際の作業評価を行うために極めて有用である。 さらに,下肢の疲労の問題に着目し,長時間の立位作業のあと,下肢に現れる生理的変化として,皮下赤血球の変化やサーモグラフィによる皮膚温の変化を定量化する方法を確立した。これによって作業疲労を客観的に評価できるようになり,作業配置や作業ローテーションなどが効果的に行えるようになる。 最後に,デジタルビヘイビアモデルとして,人工のヒューマンエラーを発生させる研究に着手し,本年度はその基礎を築いた。来年度はその方法を実用に耐えるレベルに発展させる予定である。それによって高齢者デジタルビヘイビアモデルが完成することとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際の生産ラインや個別生産において,高齢者の特性の評価は完了し,デジタルヒューマンモデルに移植する準備が整った。さらに,腰痛や下肢疲労の問題をデジタル化することが完了した。あとは,ビヘイビアの部分であるヒューマンエラーのデジタル化の問題が残っており,次年度に完成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前項目においても記載したように,本研究のまとめとして,ヒューマンエラーのデジタル化,高齢者ビヘイビアモデルの構築がテーマとして残っており,それらについて,実験およびソフトウエアの構築を行っていく。平成24年度が本研究の最後の年であるので,学会発表や研究全体のまとめも行っていく。
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