本研究では、1:多点法を用いた形状測定器から求められる導出形状の繰返し性をもとに、偶然誤差の誤差伝搬に基づく誤差見積もりモデルの妥当性を評価し、改善することで、多点法による形状測定の実用的な誤差見積もり方法を獲得する、2:多点法を用いた形状測定器において発生する、繰り返し性のある形状差(系統誤差)の発生メカニズムを解明し、その補正、除去を行う、3:多点法を用いた形状測定において問題となる繰返し性の無い、より一般的なゼロ点ずれの変動を除去する方法を確立する、の3つを目的とする。1に関しては報告前年度までに見積り方法と見積り値の妥当性が示され、当初の目的が達成された。 報告年度では、2に関して、従来の誤差見積りにおいて検討が行われていなかった送り方向の誤差の影響が、3点法の場合無視できなくなることが示され、このことに起因する可能性が高いとの見通しが得られた。 3に関して、3点法により2階差分形状を検出する3台の変位計の変位検出方向の相対位置の変動を、1 m程度はなれた距離において数10 nm程度の分解能で検出するための検討を前年度に引き続き行った。ここでは新たに考案した3本の平行ビームを用いた方法により、従来の2本の平行ビームを用いた方法では誤差要因となったビーム偏向の影響を除去可能とした。その結果、用いる変位計に見込まれる測定値のばらつき0.1 um(標準偏差)と比較して無視できない検証実験装置において発生した0.3 um程度のゼロ点ずれの日周期変動を検出することができ、100 nmを切る分解能でのゼロ点ずれの変動が検出可能であることが示された。
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