小型2ストローク(2ST)機関について、燃料にガソリンとアルコールの混合燃料を用い、潤滑油としてバイオ系のものを用いる場合の機関性能に関して、運転により生成するデポジットとトライボロジーに及ぼす影響を調べることを目的に、実験的研究を実施した。 運転経過によるシリンダおよびピストンリングの摩耗の進行について、アルコールとしてメタノールを用い、実機運転においてガソリンで運転した場合との比較において検討した。潤滑油は通常の市販のものと生分解性2ストローク用(バイオ系、生分解性)潤滑油を用いた。 シリンダの摩耗は、シリンダーとリング・ピストンの機械的な摺動、温度、圧力、トライボケミカル反応など多くの要因が関係するので、往復摺動試験機を用いた模擬試験を行い、実機実験との関連性を調べた。 以上の実験において、メタノールを燃料とした場合は、ガソリンで運転した場合よりもシリンダやリングの摩耗のは少なくなった。しかし、メタノールの場合は部分的スカッフィング発生の頻度が多いということも分かった。これは摺動試験でも同様の結果が得られ、潤滑油と相溶性の低いメタノールの場合はシリンダ壁面上に潤滑油成分が残存して油膜保持能力が高いが、相溶性の低い分、潤滑油がシリンダ壁面にまんべんなく分布できにくいということを示唆している。 また、小型2ST機関は、その機構上吸排気弁を有さず、シリンダ壁面に設けられた掃気口、排気口を通してガス交換を行っており、燃料に潤滑油を混合して潤滑している。このために燃焼室デポジット(CCD)が多く、生成したCCDが排気組成を悪化させたり、シリンダ摺動特性に悪影響を与えている。これを調べるために各燃料と潤滑油の組み合わせでCCD生成実験を行った結果、メタノールと生分解性潤滑油との組み合わせにおいて、もっともCCDの生成が少なくなった。
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