X線を応用して鉄道部品の残留応力や材質変化を検査する技術に対して、金沢大学の佐々木は、従来の方法とは全く異なり、回折環の2次元情報をフルに活用して世界に類のない高速で効率的な評価理論(新cosα法)を確立した。この理論を鉄道部品へ有効に適用するためには、最適な2次元X線検知機構が重要である。本研究では、リアルタイム計測可能なCCD方式を開発する。 従来のX線応力測定技術は、測定サンプルに対するX線の入射角を複数設定し、それぞれの角度に対してサンプルからの回折X線を精密測定する。そのため、測定時間が長く、また、測定装置に複雑で精密な機構を必要とし、重量や寸法が大きくならざるを得なかった。 これに対し、本研究では、1方向のX線照射のみで解析できるため、照射点のずれは一切発生しなくなる。また、回折環を一気に2次元デジタル検知して回折環情報をフル活用するのでデータ量が飛躍的に増え、単一入射法でありながら測定精度はむしろ向上する。さらに、装置が小型軽量でシンプルにできるので持ち運び可能になり、従来技術では困難であったポータブル化が実現する。 本研究の心臓部となる軟X線用2次元検知機構を、CCDセンサを使って、高解像度の背面反射型X線イメージング機構を独自開発し、小型で安価かつ鉄道部品検査に最適な形状にする研究を行った。2010年度に実施した基礎研究において、目標の鋼材サンプルのフェライト211回折測定に成功し、自信を深めている。今後、この成果を用いて金沢大学の佐々木の新解析理論(新cosα法)と組み合わせてシステムの完成を目指す。
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