研究課題/領域番号 |
22560138
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐々木 敏彦 金沢大学, 人間科学系, 教授 (40251912)
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キーワード | X線 / 残留応力 / 鉄道 / レール / 疲労 / き裂 / 転がり / 回折環 |
研究概要 |
敷設レールの現地計測のためのX線応力測定装置を開発し、実際にJR北陸線において実地検証を行った。従来の実験室用かつ小型サンプル専用であったX線応力測定技術を現地使用が可能とするため、二次元X線検知方式を採用し、それに適したデータ解析理論(研究代表者の発明)を適用する機構を試作して使用した。その結果、開発装置は従来の一般的な市販装置に比べて、大きさ、重量、計測時間が大幅に小型化・短縮した。また、従来のX線応力測定において常識とされてきたポイント測定ごとの装置セッティングが大幅に簡略化可能であることが判明し、装置とサンプル間の距離が±5mm程度以内であれば応力測定に支障が無いことが分かった。この結果、移動ステージとの連動により自動マッピング測定が容易となった。現状において、シェリング損傷を受けるレール踏頂面に対し、2mm間隔にレール幅方向に20点、レール長手方向に40点の合計800点の残留応力を全自動で測定可能になった。なお、現在のマッピング測定機構は、サンプルをXYステージに搭載して実施する方式であるため、平成24年度はX線装置本体側をステージ移動させて現場の敷設レールをマッピング測定可能とする機構を検討する予定である。 なお、き裂発生レールにおいては残留応力がき裂発生に伴う応力解放の影響を受けて特徴的な分布を示すことや、車輪との繰り返し接触による転位密度変化に対応した半価幅の変化が判明した。とくに、き裂発生の芽となる白色層の評価が実現できることも判明した。中性子応力解析に関しては、大震災の影響によりJAEAの施設の使用不能状態が続き実施困難であった。CCD検知機構に関しては二次元イメージング機構が完成し、検証の結果、市販の可視光用CCD素子の場合、軟X線に対するX線検知感度はIPに比較して低く、現状ではIP方式がレールの評価には適していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主目的であるオンサイト型小型X線装置の開発が順調に実現し、新しい知見が次々に得られた。一方、中性子測定は震災により実施困難が続いた。CCD方式はIP式より効率が低い結果となった。ただし、CCD素子の技術動向に依存するので、今後の状況によっては大幅な改善もあり得ると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、開発装置を営業線レールに適用してX線残留応力の実態調査を可能な限り実施する。JR東日本の協力が必要となるが、現状において、協力体制は得られている。実施においては、営業線との関係で、測定時間の一層の効率化と迅速化が求められるので、装置の周辺機構も含めて検討し進めており、概ね順調に推移している。
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