H24年度は,(1)フィルタモデルによる油の浄化実験,(2)フィルタ内部の電場と流れ場の数値解析,(3)イオンドラッグ流れ場の数値解析のための基礎研究,の3項目について研究を実施した. (1)の研究項目では,H23年度の研究結果を踏まえて,製作しやすく実用的な形状のフィルタエレメントを考案した.従来型の形状に加えて,今回考案したフィルタエレメント形状2種類と異なる電極形状の組み合わせからなる計4種類のフィルタ構造について浄化実験により性能を評価した.(2)の研究項目では,上記4種類のフィルタ構造について数値解析を行い,電界強度分布,電荷分布,イオンドラッグ流れ場を解析し,形状の違いがそれらにどのように影響するかを調べ,また,浄化性能との関連を考察した.(3)の研究項目では,矩形断面平行電極群からなるEHDポンプを新たに製作し,ポンプ特性と流れ場を実験により測定するとともに,数値解析を種々の条件で実施して両者を比較した.これにより,数値解析に必要となるイオン移動度の適切な値ならびに注入電荷領域について検討した.以下の結果を得た. 1.新たに考案したフィルタエレメントは比較的加工が容易であると同時に浄化性能を向上できた.2.高さの低い副突起を設けたエミッタ電極およびフィンを取り付けたコレクタ電極は,複雑さの割にフィルタ性能向上への寄与が低い.3.今回考案したフィルタエレメント形状はイオンドラッグ流れ場を少し弱めるとともに,フィルタエレメントの捕捉面側に汚染物粒子を運ぶことにより,浄化性能向上に寄与したと考えられる.4.矩形断面電極のように電極の2か所で電界強度が局所的に高くなる形状の場合,その2か所からその点の電界強度に応じた電荷が注入されると考えるのが妥当である.5.イオン移動度の値はWalden則値の40~50倍程度とするのが妥当である.
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