本研究では,RF MEMSスイッチの接点電極としてカーボンナノチューブ(CNT)薄膜を適用することを目的としている.これまでの研究結果より,CNT薄膜と金属の接触抵抗は高いが,CNT薄膜の上に金を蒸着すると接触抵抗を低下できることを見出した.さらにスイッチ動作を妨げる凝着力も小さいことを明らかにしている. 本年度はMEMSプロセスを用いて基板電極,および接点電極のためのカンチレバーを作製した.電極基板はまずCVD 法によって垂直CNT 薄膜を鉄触媒をリフトオフしたところのみ生成し,それをイソプロピルアルコールに浸して水平方向に倒し,最後に金をマスク蒸着することによって作製した.またカンチレバーもMEMSプロセスをシリコンSOI基板から作製し、最後に表面を金蒸着することで作製した.そしてそれらのDC 特性評価および開閉容量試験を行った.比較のための垂直配向したCNTを用いた 電極では静的接触抵抗は,Au 薄膜電極に比べて極めて大きく,電極として不向きであった.一方,水平配向CNT電極の接触抵抗は1.7Wと小さかった.また,水平配向CNT電極の開閉容量試験結果から,繰り返し接触中の接触抵抗値の変化は見られず,一定抵抗値を維持した.それゆえ水平配向CNT 電極は,更なる接触荷重の増加に伴う抵抗値の減少が期待できる.それゆえマイクロ有接点リレーデバイスの接点電極として有望であると思われる. また金を蒸着することで凝着力が大きくなることが懸念されたが,振幅数ミクロン以下の微小振動を付与することで,接触面積を大きくしても凝着力がほとんど検出されないまで低下できることを見出した.
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