研究課題
硬質炭素膜として認知されているDLC膜は多くの優れた特性を有することから、多くの分野で実用化を目指した開発が行われている。しかし、さらなる活用を狙った場合に、使用する環境によっては、例えば耐熱性の点で、その特性が十分に発揮できないといった課題が残されている。そこで、本申請研究はDLC膜の耐熱性改善に焦点を絞り、これまでに報告例の無い800℃と高温の温度環境下でも十分な性能、特にトライボコーティングとしての特性を発揮できる膜の開発を目的とする。これまで開発したSi-O系安定クラスタに加え、新たにSi-N系硬質クラスタを分散させるナノコンポジット膜の開発を中心に実施した。Si-N系クラスタの分散膜はSi-O系に比べより高硬度化が図れる可能性があり、耐摩耗性がより優れることが期待できる。得られた結果をまとめると以下のようになる。(1)Si-O素添加DLCに関してDLC膜の耐熱性に及ぼす膜中Siの効果を明らかにするために、原料ガス流量比の異なる条件で形成した膜の耐熱性をTG-DTAを用いて評価した。その結果、膜中にSi-Oを分散することによってDLC膜の耐熱性が向上するが、膜中にSiのみ含むDLC膜の場合は、大気中の加熱によってSiが優先的に酸化し、DLC膜としての特性が失われてしまうことがわかった。(2) Si-N添加DLCに関してC2H2-TMSおよびO2あるいはN2の混合ガスを用いたPBII-CVDによって形成した膜の耐熱性は、C2H2のみで形成した膜に比べ優れていることを明らかにした。特にC2H2-TMS-N2ガスを用いて形成したSi-N添加DLCが最も高い耐熱性を示し、適正な条件で形成した膜の耐熱性は700℃程度であった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Advances in Materials Science and Engineering
巻: Vol. 2012, Article ID 724126 ページ: 1-8
10.1155/2012/724126