摩擦表層の金属学的研究(トライボメタラジー、Tribo-metallurgy)により、摩擦条件と表層組織との関係を明確にし、ナノ結晶化・組織微細化する摩擦表層の生成条件やその物性を明らかにする。さらに、その摩擦を利用した超微細組織金属表層の摩耗特性を評価し、耐摩耗性・耐凝着性に優れた摩擦表層を開発してトライボロジー分野への応用の可能性を探ることを研究目的としている。1年目の平成22年度は、摩擦表層の金属学的調査(トライボメタラジー)に重点を置いた。 摩擦表層の生成は、現有の雰囲気制御が可能なピンオンディスク摩擦試験機を用いて行った。また凝着力の測定が可能となるように改造も行った。ディスク材料として炭素鋼S45C、ピン材料として純Cuを用いて、真空中(9.9×10-4Pa以下)で摩擦速度0.1m/s、荷重19.6N、回転回数は3/4~924revの範囲で変化させてピンオンディスク摩擦試験を行い、摩擦後のピンおよびディスク表面を詳細に観察した。その結果、3/4回転させた試験片には、1回の接触で既に相互移着膜(S45Cディスク上にCu膜、Cuピン上のFe膜)が生成し、Cuピン上のFe膜(厚さ約6μm)では粒径が30~700nmのナノ結晶微細組織が形成され、表面付近は緻密で下方に従い粒径が大きくラメラ構造になる傾向にあった。一方、S45Cディスク上のCu膜(厚さ1~2μm)では微細粒は観察されなかったが、Cu膜直下のS45C界面では微細なラメラ構造が形成した。また、多数回(924回転)摩擦させたCuピン試験片表面では、厚さ5.3μmの範囲で微細組織(粒径15~300nm)が形成され、1μm程度のFe粒子の混入も認められた。また、相手材のS45Cディスク上には粒径が20~180nmのナノ結晶Cu膜が生成した。
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