研究概要 |
1)GCIB加工条件の最適化 摺動子として使用するガラス表面をナノレベルまで平滑化するため,ボールレンズの材料に対応して,二つのガラス材料を選定し(旧ガラス系とフリントガラス系),GCIB加工条件として,主イオンとしてアルゴン(Ar)を,また仕上げ用イオンとして窒素(N_2)を用い,GCIB支援DLC膜形成の有無の条件を加えて,5水準を設定した.GCIB加工による表面エネルギーの変化を定量化するために,平面基板を対象にして,GCIB加工後からの表面エネルギーの時間変化を測定するとともに,加工前後の表面粗さを比較した.この結果,1)単波長粗さの平滑化効果は顕著であるが,長波長粗さには限界があること,2)表面エネルギーについては,Arのみのものは加工前より減少すること,Ar+N_2のものは加工後に大幅に増大するが時間経過後には加工前まで戻ること,タフカーボン成膜したものは基板材質に影響されず固有の値をもつこと,などを確認した. 2)摺動子アセンブリの構成 薄膜のトライボロジー特性を評価するために,摺動子を用いる試験においては,摺動時にスティックスリップなどの非定常現象が誘起されるという基本的な問題がある.この現象の発生を抑制するためには,摩擦力によって,ばねを撓ませるモーメントを発生させなくすることがポイントであることに着想し,これを具現化したばねを設計試作して,その有効性を評価した.摩擦力の作用点とばねの面内線との距離(摺動子突き出し量)をパラメータにして,摩擦力によって誘起されるばねの面外振動を~10kHzの範囲で測定して,摺動子突き出し量が0.4mm以下であれば,振動抑圧効果が顕著であることを確認した.作業上の効率性を考慮して,標準の設計値として0.4mmを選定した.
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