研究課題/領域番号 |
22560156
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
半場 藤弘 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20251473)
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キーワード | 乱流モデル / RANS / LES / ハイブリッドモデル |
研究概要 |
本年度は時間フィルターに基づくハイブリッド乱流モデルの研究として以下の2項目について研究を実施した。 1.主流に垂直な領域分割によるチャネル乱流のハイブリッド乱流場の解析 空間フィルターを用いてフィルター幅を主流方向に変化させて、上流では格子幅より十分長いフィルターを課しRANS領域とし、下流では格子幅と等しいフィルターを課しLES領域とし、統計量を調べた。上流ではSGSエネルギーが卓越し、下流に進むにつれSGSエネルギーが減少しその代わりにGSエネルギーが増加し卓越することが示された。さらに非可換性による付加項の強度を調べ、RANSとLESの境界領域では付加項の揺らぎは無視できずGS応力項と同程度の大きさを持っていることがわかった。また乱流エネルギーの輸送方程式では境界領域において移流項と拡散項の付加項が大きい値をもち、生成項や散逸項以上に大きい値を持つことが示された。その結果実際のハイブリッド計算において下流方向へのGSエネルギーの増大を再現するには、生成項の修正でなく移流・拡散項の付加項の効果をきちんと取り入れる必要があることがわかった。 2.速度の時間積分に基づく長さスケールの導入と渦拡散率の輸送方程式の解析 空間フィルターの代わりに時間フィルターによるチャネル乱流の解析を試みたが、このままではデータ解析に多大な時間がかかることが判明した。そこであらかじめ時間フィルターを組み込んだ変数の時間発展を解くことを考え、速度を時間積分することにより得られる新しい長さスケールを導入した。その結果、この長さスケールを用いて乱流の渦拡散率を定式化できることが理論的にわかり、チャネル乱流のデータを用いて検証した。また、座標変換によらない共変的な時間フィルターや時間積分を定義するため、乱流理論を用いて共変的なモデルの導出を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間フィルターによるチャネル乱流の解析は壁面に平行な領域分割の場合も主流に垂直な領域分割の場合も順調に進んだ。特に速度の発展方程式だけでなく、乱流エネルギーの輸送方程式についても解析ができた。また時間フィルターによる解析の代わりに、時間積分に基づく新しい長さスケールを導入し考察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
時間フィルターによるチャネル乱流の解析はこのままでは多大な時間がかかることが判明した。その代わりにあらかじめ時間フィルターを組み込んだ変数の時間発展を解くことを考案し、速度の時間積分に基づく新しい長さスケールを導入した。今後はこの長さスケールが乱流の渦拡散率・渦粘性率とどう関係するかを精査し、また積分時間を変化させることでRANSとLESのハイブリッド計算のモデル方程式を導くことを試みる。
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