本年度は時間フィルターに基づくハイブリッド乱流モデルの研究として以下の3項目について研究を実施した。 1. 渦拡散率と長さスケール分散の輸送方程式の解析: 時間フィルターによるデータ解析は多大な時間がかかることが判明したため、あらかじめ時間フィルターすなわち時間積分を組み込んだ変数を解くことを考案し、スカラー輸送に伴う速度を時間積分することで得られる長さスケールを導入した。その長さスケールを用いて乱流の渦拡散率が定式化できることがわかり、渦拡散率と長さスケールの分散の輸送方程式をチャネル乱流において検証した。 2. 速度の時間積分に基づく長さスケールの導入と渦粘性率の輸送方程式の解析: スカラー輸送に伴う渦拡散率より、乱流運動そのものを表す渦粘性率を扱うため、運動量輸送に伴う速度を時間積分することで得られる新しい長さスケールを導入した。それを用いて渦粘性率を定式化し、チャネル乱流のデータを使って渦粘性率の輸送方程式を解析し検証した。その結果、仮に平均速度勾配がなくてもレイノルズ応力すなわち乱流揺らぎ速度が渦粘性率を生成することがわかった。またレイノルズ応力、渦粘性率、長さスケール分散が生成項を通して密接に関係していることが示された。 3. 乱流理論による共変的なモデルの開発と逆時間方向の乱流拡散の解析: 座標変換によらない共変的な時間フィルターや時間積分を定義するため、従来の乱流理論を改良し共変的なモデルを導出する理論的方法を構成した。特に非一様性の効果を取り込む方法の考察を行った。また時間積分の代わりに時間について逆向きに乱流方程式を解く方法の可能性を探った。拡散方程式を解くときの数値計算の不安定性を物理的に考察し、フィルターを用いて安定化させる方法を導出した。
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