研究課題
本研究では希薄気体流れの解析において現在最も有力とされるDSMC法において、その技法の特徴を活かしつつ、DSMC法で問題となる統計的な誤差を低減させるスキームを構築することを目的とする。これまで空間的に一様な流れ場では、分子の熱速度に対し局所平衡を仮定したMaxwellの速度分布関数をあてはめて、その値を重み係数とすることでマクロな流速のノイズが重みをつけない流速のノイズよりも飛躍的(1/100 以下)に減少することを明らかにしたが、速度勾配のある空間的に非一様な流れ場についてはマクロ流れとしての連続の式とエネルギ保存式を必ずしも満たさない場合のあることが明らかになった。本年度は、これらの問題点を解決するために、Markov過程の考え方を導入して分子を生成・消去することによりマクロな運動量とエネルギを統計的に満たすような試みを行った。その結果、連続式とエネルギ保存の式を満たすこが確認された。しかし連続流に近い条件でCouette流れの解析結果をDSMC法並びにNavier-Stokes(NS)の差分解析と詳細に比較したところ、DSMC法の解とNSの差分解は良く一致したが、本手法は必ずしも一致せず、特に壁面近傍での差異が大きいことが確認された。この原因の一つとして、連続の式とエネルギ保存を満たすために導入した手法が、分子と壁面との干渉について十分対応出来ていないことが予想される。DSMC法におけるノイズ低減法を確立させるためには、分子と壁面の干渉について、更に特別なノイズ低減法を考慮する必要のあることが明らかになった。これらの知見は今後の発展につながる重要な成果であると考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Rarefied Gas Dynamics
巻: AIP CONF. PROC. 1501 ページ: 6661,6666