研究概要 |
小型低乱風洞における乱流境界層にて初期撹乱の検討を行った.長さ2mの平板に前縁から250mmの位置に高さ2mmの微小突起をスパン方向に並べた粗度をトリッピングとして取り付け,平板に発達した境界層を乱流に遷移させる.乱流境界層として十分発達した前縁下流1500mmに初期撹乱挿入装置のプラグを取り付け,主流流速は14m/sで実験を行った.撹乱の速度場測定には,I型熱線を並べた熱線プローブを三次元自動トラバース装置に取り付けて行った.初期撹乱を導入する方法として,平板に小孔を開け平板鉛直方向にパルス型の周期撹乱噴流の電圧を変えて生成した.得られた波形を撹乱の周期ごとにアンサンブル平均し,周期変動成分と非周期変動成分に分けた.この周期変動成分を用いて時空間分布図を描いた.その結果,撹乱が線形性を持つ範囲では周期変動速度を初期撹乱でスケーリングした場合,入れる初期撹乱の大きさに関わらず時空間分布図が同じような分布を持ち,はじめに低速領域がしばらく現れたあと遅れて高速領域が広がった.これは噴流によって壁近くの低速度域が持ち上げられたためと考えられる.また流れ方向に測定点が十分多いため,撹乱の構造がより視覚的に理解しやすくなった.さらに周期速度の流れ方向分布をみると撹乱が急成長したあとで減衰していく様がみられた.この時,周期変動速度を初期撹乱でスケーリングするとそれぞれの流れ方向分布が重なった.そしてこれらの実験の際に平均の速度場に影響を与えずに撹乱を挿入することができた.以上の結果から平板乱流境界層内に,初期撹乱の強度に比例して線形的に強くなる線形撹乱の存在を確認することができた.
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